帆船
航海中

誰も来ない日がある独立3ヶ月の美容室に2つの戦術を置いてきた

住宅街に開業した個人経営の美容室。温かみのあるナチュラルな内装で顧客を待つ、静かで落ち着いた雰囲気の店内

「オープン記念キャンペーンをやったんですけど、その後が続かなくて…」

私がいつも通っていた美容院の担当者が独立して、自宅で美容室を開業したのこと。

久しぶりに行ってみると、オープンから3ヶ月。
売上はまだまだ不安定で、誰も来ない日もあるという話でした。

私自身、戦略のコンサルティングをしていますが、この美容室の状況は、多くの中小企業が陥る「典型的な罠」と全く同じでした。

ずっとお世話になってる美容師さんなのでオープン記念に2つの戦術を置いてきました。

オープンキャンペーンという名の「安売り」

この美容室、オープン時にこんなことをやっていました。

  • チラシを手配りでポスティング
  • 「20%オフで炭酸シャンプー体験」というキャンペーン
  • インスタグラムとLINE公式アカウントの開設

実際、私もこのキャンペーンを利用しました。

確かにお得感はあります。
炭酸シャンプーは気持ちよかった・・・でも、これは集客ではなく、ただの安売り

お客さんは「安いから来た」のであって、「この美容師さんに切ってもらいたいから来た」わけではないからです。次回、通常料金に戻ったとき、果たして来てくれるでしょうか?

売上の公式はシンプル。

売上 = 顧客数 × 客単価 × リピート率

単発のキャンペーンは「顧客数」を一瞬だけ増やします。

でも「リピート率」には何の貢献もしていません。
むしろ「安い店」という印象だけが残り、通常料金での来店ハードルを上げてしまうこともあります。

これは戦術です。しかも、その先に戦略がない戦術です。

「戦術」を2つ置いてきました

そこで、私はその場で2つの戦術を提案しました。

戦術1:客が客を連れてくる仕組み

美容室のカウンターに置かれた2枚の割引券。「FOR RETURNING CUSTOMERS(リピーター用)」と「REFERRALS(紹介用)」と記載され、客が客を連れてくる仕組みを視覚化

即効性はないですが、長い目でみるととても効果を発揮しやすい方法!

来店したお客様全員に、2枚の割引券を渡す。

  • 1枚は自分用(次回来店時に使える)
  • もう1枚は知り合い用(友人に渡せる)

そして、有効期限を必ず切る。

これは単なる「紹介割引」ではありません。構造として機能する設計があります。

  • 自分用の券があるから、「次も来よう」と思う。
  • 知り合い用の券を持っているから、誰かに「いい美容室見つけたよ」と話すきっかけができる。
  • 有効期限があるから、「今度でいいや」で忘れられない。

そして、紹介された人がまた2枚もらえば、指数関数的に広がっていく可能性がある。

美容室は「場所」ではなく「人」につくビジネスです。
今回のように、前の店から顧客が付いてきてくれるのが理想ですが、独立したての場合、その母数は限られています。

だからこそ、「来てくれた人に、次の人を連れてきてもらう」構造が必要なんです。

戦略2:メンズのサブスク化

馴染みの美容室に通う男性客。月1回のルーティンとして定着した美容室でのひととき

男性は女性と違い、同じ美容室に通い続ける傾向があります。これを活かさない手はありません。

提案内容

  • 1年契約・12回セットで月額3,000円
  • 通常1回4,000円なら年間48,000円 → 36,000円(12,000円お得)

これは「割引」に見えますが、本質は違います。

「リピート率」を最初から確保してしまう設計です。

男性客は月1回のペースで通うことが多くカットのみのシンプルなメニューが中心。
だからこそ、サブスクリプションとの相性がいい。

女性客は施術内容が変わるしホットペッパービューティーみて他のお店に行ってしまいがちなのでこの手法は向きません。
だからメンズ限定なんです。

この美容室の周辺には工場が多く、男性の単身世帯も多い。立地とも相性がいい。

ここまで考えて初めて、「戦術」が「戦略」になります。

戦略とは「誰に、何を、どう届けるか」の設計図

今回の美容室に足りなかったのは、この設計図です。

  • ターゲットは誰なのか?(男性か、女性か、ファミリーか)
  • どうやってリピーターを作るのか?
  • 単発の売上ではなく、継続的な収益をどう作るのか?

この「航路図」がないまま、チラシを配ったり、キャンペーンを打ったりしても、それは海図を持たずに航海しているようなものです。

風に流され、たまたま近くの島には辿り着けるかもしれません。
でも、目的地には着けない。

戦略なき戦術は、ただの「忙しさ」を生むだけです。

小さな店舗だからこそ、仕組みで勝つ

独立したての美容室には、大手のような広告予算はありません。でも、だからこそ「仕組み」で勝負できます。

  • 単発のキャンペーンではなく、継続する仕組み
  • 新規集客にお金をかけるのではなく、既存客が客を連れてくる仕組み
  • 一回きりの売上ではなく、継続的な売上を生む仕組み

これはWeb集客でも同じです。

「SEO対策をすれば売上が上がる」
「SNSをやれば集客できる」

そう思って始めても、その先に「誰に、何を、どう届けるか」の設計図がなければ、結局は戦術を繰り返すだけになります。

今回の美容室がこれからどうなるか、私も一人の顧客として楽しみにしています!

もし、あなたの会社も「戦術」ばかりを繰り返していて、その先の「戦略」が見えていないなら。一度立ち止まって、航路図を描き直す時かもしれません。

リージョン・コンパスでは、そうした経営者の方々と、じっくり向き合う戦略コンサルティングを提供しています。

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